DUO PROJECTとは

国内外でトップレベルの演奏家たちとの連携のもと、室内楽を通して若手音楽家の育成に力を注いできたMusic Dialogue(ミュージック・ダイアログ)。2021年には続く次の10年を見据えて、アンサンブルの最小単位である“Duo(二重奏)”を探求するための新たなプロジェクトをHakuju Hallとともに始動させました。

楽譜を読み解くことで見えてくる二つの楽器の対等な「対話」を、若きデュオ・アーティストはどのように見出してゆくのか。Music Dialogue芸術監督・ヴィオラ奏者である大山平一郎に加え、ピアニストの上田晴子、ヴァイオリニストの竹澤恭子という、世界的な音楽経験に裏打ちされた実力派の演奏家たちは、その歩みにどう寄り添うのか。

解釈の変化に立ち会える公開リハーサルも含め、音楽をより深く味わうための示唆に満ちた二重奏の奥深さをじっくりご堪能ください。

2023

“Duo”とは何か。

ラテン語で数字の2を表すこの語は「二重奏」を示す表現として用いられる。最小人数での室内楽、いわば室内楽の根幹にかかわる編成だ。

創設8年目となる2021年、Music Dialogueはこの編成で最も充実した音楽が書かれてきた曲種、ソナタ形式を用いた二重奏ソナタに注目。その音楽世界を探る“Duo Project”(デュオ・プロジェクト)をスタートさせる。

たとえば、ヴァイオリン・ソナタ。
ベートーヴェン、ブラームス、フランク、プロコフィエフ……多くの作曲家たちが自ら書いた楽譜では、二重奏ソナタは概して「ピアノとヴァイオリンのための」ないし「ヴァイオリンとピアノのための」ソナタ、と題されている。実際、そこで作曲家たちがピアノに課した重要性は、デュオ・パートナーとなるもうひとつの楽器と互角・対等だ。

かつてマールボロ音楽祭で音楽監督ルドルフ・ゼルキンをはじめ、トッププレイヤーたちと室内楽経験を積みながら、Music Dialogue芸術監督の大山平一郎は演奏において「演奏者の自己表現」の前に「作曲家と作品への適切な理解」が重要であるとの確信に至った。大山はMusic Dialogueでも自身ヴィオラ奏者として室内楽演奏に加わり、若い共演者たちにその考えを共有してきた。

室内楽の根幹に迫るDuo Projectでも、大山は二重奏の本来のあり方に立ち返りつつ、さらに演奏者と共演しながら適切に指導ができる自分以外の音楽家として、ピアニスト上田晴子とヴァイオリニスト竹澤恭子に協力を仰ぐ。室内楽の実績でも知られる破格のプレイヤーたちが大山と同じく、若い演奏家たちと共演することで、Music Dialogueはヴィオラが組み込まれない二重奏=Duoでも探求の旅を続けられるようになった。

ひとつの楽器とひとつの楽器、ひとりの奏者とひとりの奏者――。

大山・上田・竹澤らと密度の高い、対等な「対話」を重ねながら、若く卓越した演奏家たちはどこまで新たな能力を開花させるのか。現場で傾聴し見届ける客席とも「対話」を続けつつ、この新たなプロジェクトは未来を探り、切り開いてゆくことになる。


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