9/4 の Duo Project は 4 人の演奏家が曲ごとに共演者を変え、3 曲の作品を 3 通りの組み合わせの二重奏で披露する少し変わったデュオ・リサイタル。
こちらのページでは、演目 3 作を紹介します!
9/4 の演目は、3 曲とも作曲家が別々。
作曲年代もほどよく幅があり、音作りも全く違い、ピアノとヴァイオリンが織りなす二重 奏の奥深さを違った角度から味わえます。
・シマノフスキ:神話(1915)
・ブラームス:ソナタ第 1 番「雨の歌」(1879)
・プロコフィエフ:ソナタ第 2 番(1944)
母国独立を経験したポーランド人シマノフスキ、ウィーンのドイツ人ブラームス、そしてソ連に戻った国際派ロシア人プロコフィエフ。
両楽器の音色を活かした描写的なシマノフスキの「神話」に続き、ソナタ 2 曲では 19 世紀 と 20 世紀の音作りの違いにも注目。奏者の個性はどう映えるでしょう?
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シマノフスキはポーランド人作曲家ですが、ポーランドが独立を回復する 1918 年まで彼は 「ロシア帝国の人」でした。彼の故郷は中世後期以来リトアニア領だったウクライナ中部 にあり、リトアニアとポーランドが連合王国になった末王位後継者を立てられず消滅した 18 世紀末からロシア領でした。
ワルシャワの音楽院で学んだ後、シマノフスキはベルリンやウィーンで経験を積み、早くから旅を重ねて異国への関心を育みました。歌曲や声楽曲でも驚くほど多様な国々の詩を歌詞に使いましたが、長い歴史と輝かしい太陽に恵まれた地中海世界はとりわけ若き作曲家を虜に。
その印象から『メトープ』(1915)や歌劇『ロジェ王』(1926)など多くの傑作が生まれました。 『神話』(1915)もその一つ。川の神から逃れ泉に変身するアレトゥーサ、水面に写った自身 に恋するナルシス、森の精の踊りや牧神パンの笛…細やかな音色表現で古代神話の場面を 描き出します。
ドビュッシーやストラヴィンスキーが描写表現の幅を大きく拡げた時代の作らしい『神話』に対し、ブラームスの第 1 ソナタは純粋な音楽展開にドラマが。しかしこの曲も湖畔の保 養地で書かれ、歌曲「雨の歌」の旋律も登場…と、水や旅のイメージでシマノフスキ作品 と通じるところもありますね 。
ブラームスのソナタは、初版譜表題ページに「ピアノとヴァイオリンのための」とあります。ベートーヴェンの頃に遡る古来の二重奏ソナタの伝統通り、ピアノは伴奏ではなくむしろ主役格。ブラームス自身がピアニストだったこととも無縁ではない音作り、9/4 のデュオ解釈はどうなるでしょう?
生前のプロコフィエフも、凄腕ピアニストとしての演奏活動で有名でした。保守的な批評家たちも作曲家としての彼に難色を示しこそすれ、精密な演奏の求心力は認めざるを得なかったほど。ブラームス作品を聴いた直後の耳なら、彼のソナタも両楽器の均衡がより明確に聴こえそうです。
9/4 に演奏されるプロコフィエフの第 2 ソナタは、彼のフルートとピアノのためのソナタを ヴァイオリン向けに改作した作品。ちなみに…改作を示唆し助言も与えたヴァイオリンの名手ダヴィド・オイストラフは、その数年前に作曲家と公開チェス対決にも興じています。 https://en.chessbase.com/post/the-1937-prokofiev-oistrakh-match
新時代へ歩み始めた若き二人の名手は、圧倒的な室内楽経験と演奏語彙を誇る二人の大先達とそれぞれシマノフスキ・ブラームスを披露した後、どのようなプロコフィエフの作品像を私たちに伝えてくれるでしょう?
この 3 曲・この 4 人ならではの一夜、9/4 ハクジュホールに是非ご期待ください!
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【DUO PROJECT Concert 2022】
シマノフスキ:神話(對馬・上田) ブラームス:ソナタ第 1 番「雨の歌」(竹澤・キム) プロコフィエフ:ソナタ第 2 番(對馬・キム)
上田晴子/ジャンミッシェル・キム(ピアノ) 竹澤恭子/對馬佳佑(ヴァイオリン)
9/4(日)ハクジュホール 17:00 開演