コラム

【ディスカバリー・シリーズ2月公演に向けて】 川本 嘉子さんより

2024.02.08

2月のディスカバリーシリーズに出演されます ヴィオラの川本 嘉子さんから、メッセージをいただきました。

 

バイオリンの試奏会

本日はバイオリンの試奏会に参加しました。
私はバイオリンは殆ど弾きませんが、素晴らしいバイオリン奏者の方のお手伝いで 勉強させてもらいにお供として。

全部で8本のバイオリンの音色を聞いて それぞれの個性が主張したり、頑固に職人堅気の音を出すものもあり、製作者の魂が会場に溢れ 幽玄な空気に包まれました。
数百年前に生まれた楽器からメッセージが溢れてくる様子は芸術そのもので 悠久の時の流れを一瞬に引き寄せる感覚が気持ち良かったです。

ヴィオラの場合は年に数台 素晴らしい楽器に出逢えたらラッキーなくらい名器もほぼ出回らないような市場ですので このように弾き比べる機会は経験がなく、とても興奮しました。
ヴィオラの楽器も珍しいのですが ヴィオラ用の独奏曲もピアノやバイオリンのようには選択するものも少ないために演奏会の度に 選曲やテーマ作りには苦労します。

逆にオーケストラや室内楽には地味ながらも必ずヴィオラのパートが存在します。とはいえ中音域なのでお客様には実際 聞こえているかどうか疑問ですが、ヴィオラを弾いているとその作曲家の特徴を捉える事が容易に出来ます。
生真面目だったり 天性の才能を気軽に音楽にしていたり、様々な情報が提起されていて ヴィオラ奏者としては それぞれの作曲家に興味が尽きない日々です。
そんな興味を深くしていくと マエストロ大山氏のような指揮者になれるのでしょうか?
その辺りにも興味は尽きません。
大山先生のようにヴィオラ奏者から指揮者になる事は とても自然のことのように思います。
指揮者がオーケストラのバランスを確認しに客席に行く時に スッとヴィオラ首席奏者に棒を渡しす映像を幼い頃から映像で見る事があったので自然な成り行きとしてインプットされていました。
実際 カルロ マリア ジュリーニやシャルル デュトワに続いているのがマエストロ大山という訳です。

そしてオーケストラ中音域を弾くということは、すなわち瞬時に低弦やティンパニーなどのベース陣のタイミングを見計らいながら 流麗なメロディを奏でる楽器(ともすればエゴイストな輩)の音を引き立てたり、音程を当てるのに必死なホルンや金管などと0.1秒たりとも違わないタイミングでアンサンブルすることは 非常なる緊張感を感じるものなんです。
バイオリンを弾いていた頃とは比べようがないくらい 音列は簡単なものの、タイミングを合わせる事が劇的に難しい!と思いました。
万がイチ オーボエのメロディや仕切り上手なコンサートマスターとヴィオラがズレようモノなら 「真正面からトラクターにぶつかられたような衝撃」をヴィオラの首席奏者は感じています。

室内楽の場合はサンドイッチの具材の部分の気持ちで ポッテリとした魅力的な和性を構成出来るようにバランスを取り、足りない隠し味を瞬時に足せるような演奏を目指しています。

私が若い頃から世界的な素晴らしい演奏家達と体験出来たバブル時代の遺産を若い人達にエッセンスとして振り撒けたら 大成功だと思っていますが、さて今回のメンバーでは如何に?

川本 嘉子


川本 嘉子 KAWAMOTO Yoshiko 【ヴィオラ
1992年ジュネーヴ国際コンクール・ヴィオラ部門で最高位(1位なしの2位)。1996年村松賞、1997年第7回新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、2015年東燃ゼネラル音楽賞・奨励賞受賞。京都アルティ弦楽四重奏団、AOIレジデンス・クヮルテットのメンバー。タングルウッド、マールボロ、ダボス、サイトウキネン、アルゲリッチ音楽祭等のフェスティバル、小澤音楽塾、水戸室内管等に参加。また、ソリストとして、これまでにガリー・ベルティーニ、ジャン・フルネ等の著名な指揮者と共演。1999年~2002年都響首席奏者。2017年~2021年までNHK交響楽団の首席客演ヴィオラ奏者を務める。
小澤音楽塾、愛知室内オーケストラでは弦楽器アドヴァイザーとして、後進の育成にも積極的に力を注いでいる。
類稀なる表現力とテクニックで聴衆を魅了し、日本を代表するヴィオラ奏者の一人として常に第一線で活躍している。

       


○字幕実況解説付き公開リハーサル
【日時】2月14日(水) 19:00開始  (18:30開場)
【会場】中目黒GTプラザホール (中目黒駅南口よりすぐ)
【料金】一般 2,500円、学生 500円 (自由席)
【曲目】ベートーヴェン:弦楽五重奏曲ハ短調 Op.104
【出演】前田妃奈(Vn.)、北田千尋(Vn.)、川本嘉子(Vla.)、大山 平一郎(Vla.)、加藤文枝(Vc.)
【解説】金子鈴太郎(チェリスト)、小室敬幸(作曲、音楽ライター)

○本公演
【日時】2月17日(土) 16:00 開演(15:30 開場)
【会場】築地本願寺 講堂(聞法ホール2F)
【料金】一般 4,500円、学生 2,000円 (指定席)
【曲目】
 ベートーヴェン:弦楽五重奏曲ハ短調 Op.104
 シェーンベルク:弦楽六重奏曲 ≪浄夜≫ Op. 4
【出演】前田妃奈(Vn.)、北田千尋(Vn.)、川本嘉子(Vla.)、大山平一郎(Vla.)、金子 鈴太郎(Vc.)、加藤文枝(Vc.) 



※プログラムや出演者は都合により変更になる場合があります。
※お客様のご都合による申し込み後のキャンセル及び返金はお受けできません。予めご了承ください。



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